RSウイルス感染症について

   
RSウイルス感染症は、毎年秋から冬にかけて主に乳幼児で流行する感染症です。
年齢別では2歳以下の小児が80%以上を占めています。

1 RSウイルス感染症とは
 RSウイルス感染症はRSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)により引き起こされる病気で、上気道感染、そして細気管支炎、肺炎のような下気道感染を引き起こします。
 2歳までにはほとんどすべての児がRSウイルスに感染するといわれており、乳幼児が感染すると、25〜40%が細気管支炎や肺炎をおこします。0.5〜2%は入院が必要となり、入院するのはほとんどが6 カ月未満の乳児です。
 低出生体重児、心疾患、肺疾患、免疫不全のある方は、重症化のリスクが高いといわれています。終生免疫は獲得されないため、どの年齢でも再感染は起こりますが、一般的には年長児以降では重症化はしません。


2 原因と感染経路
 原因はRSウイルスです。
 ウイルスを含むしぶき(飛まつ)がくしゃみや咳で空気中に放出され、それを吸い込む、あるいは飛まつが鼻、口や目に接触することで感染します。
 潜伏期間は2〜7日(通常4〜5日)です。ウイルスは、通常3〜8日間排出されますが、乳児や免疫力が低下した人では4 週間排泄される可能性があります。

3 治療
 症状は、鼻水、咽頭痛、咳、頭痛、倦怠感、発熱などで、風邪と見分けるのは困難です。
 特効薬はなく、治療は安静、補液、去痰剤の投与などの対症療法が中心となります。

4 予防のポイント
 予防のポイントは、手洗いと咳エチケットです。
 早産児や慢性呼吸器疾患を有するハイリスクな乳幼児には、重症のRSウイルス疾患を予防するためにパリビズマブPalivizumab(抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体)という薬を使用する場合があります。使用については医師の判断になります。
 RSウイルスワクチン開発への取り組みは行われていますが、まだ利用できるものはありません。

5 検査や病原体の話
 通常は、症状などにより診断されます。入院中の患者・乳児・パリビズマブ製剤の適用となる患者については迅速診断キット(抗原検出診断キット)を用いた検査が行なわれます。ウイルス分離と比較して、抗原検出キットの感度は一般に80〜90%となっています。