乳児良性直腸出血
生後2カ月くらいの赤ちゃんで,母乳を飲んですくすく育ち,機嫌もよいのに,便の中にすじ状ないしは点状の新鮮血が混じることがあります.多くの場合,「乳児良性直腸出血」です.
<乳児良性直腸出血とは?>
乳児良性直腸出血は新生児期から生後6カ月の乳児に起こり,平均発症月齢は生後2カ月です.便性は普通,出血量はごく僅かで,母乳栄養児に多く,全身状態が良好であることが特徴です.
<原因は?>
臨床的検討では,末梢血中の好酸球増多や食物抗原に対する特異的IgE陽性が認められる場合があります.
乳児良性直腸出血はなんらかの免疫反応を背景に,直腸粘膜の上皮細胞の回転が亢進して起こると考えられています.
<治療は?>
ほとんどの症例は自然に治癒するため,特別の治療を不要です.病因として免疫反応の関与が推定されていますが,食物制限は不要です.
<鑑別診断>
乳児良性直腸出血以外で乳児期に血便をきたす主な疾患は以下の通りです.下記に示した症状がある場合には治療が必要です.早めに受診してください.
(1)腸重積:
大量の血便,激しい嘔吐,不機嫌
(2)メッケル憩室:
突然の出血,腹痛はなし
(3)アレルギー性直腸炎:
頻回の粘血便,アトピー体質あり
(4)遷延性下痢症:
2週間以上持続する下痢,通常の下痢治療に無反応
(5)感染性腸炎:
発熱,血性下痢便(6)裂肛:硬い便,排便時痛,肛門部の裂傷あり